現役生の研究(2017年度)

「ミズニラの生育環境の解明と 生育地維持の方法の検討」M2

ミズニラIsoetes japonicaは、本州~四国の低地の湿地や池沼周辺、水田に生育する ‘水生シダ植物’です。ミズニラは全国的に減少傾向にあり、環境省のレッドリストでは準絶滅危惧種に指定されていますが、具体的な保全方法について研究された例は数えるほどしかありません。本研究ではそのような状況にあるミズニラの生育地を維持することを目標とし、管理方法などが異なる3カ所の生育場所について調査を行っています。それぞれの調査地には1m×1mの調査枠を10枠ずつ設け、環非生物的環境(光環境など)と植生に関する調査を行い、収集したデータを解析、その結果からミズニラが好む生育場所を推測しようと考えています。最終的にはその環境をどのような方法で維持可能かを提案する予定です。

「河川の水位低下による 底生生物群集の変動」M2

水生昆虫をはじめとする底生動物は、 渓流生態系を担う動物として、 種数・現存量ともに重要な位置を占めています。河川上流部では、渇水時の水位低下が中流域や下流域に比べて早く伏流状態になります。長時間その状態が継続すれば死滅は当然ですが、短期間であれば、ある程度生存を続け、水量の増加するまで生きのびる種も存在します。そこで、本研究では河川上流部の水位低下に着目し、伏流現象の起きている期間での底生生物群集の生息環境について明らかにすることを目的としています。環境調査の結果としては水路幅、水深、流量ともに夏季に比べ冬季が著しく低下することが明らかになりました。底生生物調査で採集した種の生活型と出現した場所の関係を調べるために出現した種の生活型に分類をしました。

 


「春植物消失後の植生と光環境」M2

春植物は,木々が葉をつける前の早春の雑木林で芽吹き,林床に差し込む日を浴びてきれいな花を咲かせ,そして木々が葉を伸ばし切る夏前には地上部が枯れて地下部で休眠をする特殊な生活史を持つ植物です。ニリンソウは,群生型で白いきれいな花を咲かせる春植物で,ニリンソウが自生する多くの都市公園では保全が図られています。このニリンソウに関して,夏明るい場所と暗い場所でニリンソウが消えたあとに生えてくる植物の量が異なっていることがわかっており,この植生のパターン化と植生タイプによってニリンソウの個体群あるいは個体の成長にどのような影響があるのかを検討するため調査を行っています。

「都市域の中小河川を利用する水辺性鳥類に影響を与える環境要因」M2

現在、宅地開発などにより都市域では鳥類の生息場所が減少しつつあります。その中でも河川は、鳥類の貴重な生息場所として残っています。しかし、都市域の河川は水害対策のためコンクリートの護岸化や河道の直線化などが行われてきたことにより、河川においても鳥類の生息に影響を及ぼされてきました。今まで都市域の樹林地や公園緑地などにおいて鳥類群集に焦点を当てた研究は行われてきましたが、河川に着目した研究は多くありません。特に、人間活動の影響が大きいと思われる中小河川での研究は皆無に等しいです。本研究では、代表的な都市域の中小河川である野川、仙川、神田川、善福寺川において水鳥に絞り鳥類調査を行い河川構造との関係性を調べています。

 


「圏央道茂原第一トンネルにおける哺乳類の利用および生息地分断の回復」M1

道路が建設されることでそこに存在している生態系は大きな影響を受けます。例えば道路での野生動物の死亡や生息地の分断です。近年このような道路が引き起こす野生動物に対する負の影響に配慮した道路横断施設の建設が行われています。圏央道茂原第一トンネルは高速道路によって分断された2つの森をつなぐため,中小型哺乳類の通過を目的とした動物専用の橋です。本研究では圏央道茂原第一トンネルの利用状況のモニタリング、分断された2つの緑地での往来の有無を調べることを目的として研究を行っています。現在の調査では,主にホンドタヌキ,ニホンイノシシ,ニホンノウサギ,アライグマ、ニホンアナグマの利用が確認されています。

「人工針葉樹林における広葉樹二次林および開放地からの距離に伴う甲虫相の差異」M1

動物の糞を食物として利用する食糞性コガネムシ(以下、糞虫)や、オサムシ科に代表される地表徘徊性甲虫は、環境の変化に敏感に応答することから環境指標として、森林環境の変化の評価に多く用いられます。本研究では、人工針葉樹林の甲虫群集の種組成が、1)広葉樹二次林との境界からの距離に従いどのように変化するか、2)林道や伐採地などの開放空間から林内にかけてどのように変化するか、を明らかにすることを目的とし、東京都奥多摩町の人工針葉樹林および隣接する広葉樹二次林において、糞虫・地表徘徊性甲虫群集の調査を行っています。森林管理を考える上で、伐採を含む樹木の適正な管理や、天然林・広葉樹二次林などの人工林内への適正配置は重要な課題であり、昆虫を指標として検討したいと考えています。

 


「トンボ類の群集構造から見た 東京港野鳥公園のハビタット特性」B4

東京港野鳥公園は1989年に東京都大田区の埋立地に造成された海上公園で、園内の自然生態園には淡水池、水路、水田、草地、樹林地など里山景観を構成する多様な環境が人工的に復元されています。野鳥公園の環境要素には多くの水辺環境が含まれていることが特徴で、そうした環境の保全を重点に維持管理を行っています。しかし鳥類以外の生物と景観の関係にスポットを当てて園内の環境を評価した先行研究は多くありません。そこでトンボ類を対象に、野鳥公園がトンボ類にとって生息地としてどのような機能を果たしているかを評価し、野鳥公園の生物に配慮した水辺環境の管理や、湾岸部埋立地における生物生息空間の復元方法を提案することを目的としています。

 

「シチズンサイエンスの参加者の特徴と参加の動機」B4

シチズンサイエンスとは市民が研究に参画する活動のことを指します。市民参加型調査も含まれるとされ、日本ではモニタリングサイト1000などが該当し、広範囲・長期間の調査が行えるという特徴があります。最近では、チョウや鳥など様々な生物を対象に広範囲で調査するシチズンサイエンスプロジェクトが行われています。この研究ではNPO法人バードリサーチ他が環境省からの委託で行っている全国鳥類繁殖分布調査のうち東京都島嶼部での調査の参加者にアンケートとインタビューから、どのような人がなぜ参加しているかを調べています。ここから、研究者と参加者の良い関係づくりやシチズンサイエンスが広く社会に浸透するためのヒントを考えます。

 


「多摩川河口干潟におけるヤマトシジミの 生息状況とその局所的環境」B4

高度成長期からの開発により、東京のような都心部では砂浜や干潟など多くの自然環境が消滅しました。その中で都市部を流れる多摩川に現存する多摩川河口干潟は残された貴重な干潟のひとつであり、水産資源生物の生息地として機能しています。調査地である干潟は、水流の影響を受けて底質が砂質と泥質に分かれ、ヤマトシジミが優占して生息しています。本研究では干潟の地点ごとに本種がどれほど生息するか、また生息の寡多にどの環境要因が作用するかを生息数調査、環境調査により明らかにします

 

「アカボシゴマダラとゴマダラチョウの休眠覚醒の比較」B4

外来種が在来種とどのような影響を及ぼし合うのかについては様々研究がなされており、そうした研究から外来種の影響予測や対策を検討することは非常に重要です。関東地方に定着している外来種の蝶アカボシゴマダラは、それに近縁な在来種の蝶ゴマダラチョウと競合関係になることが指摘されており、干渉作用などを通じてゴマダラチョウに悪影響を及ぼす可能性が指摘されていますが、実際にどのような影響や相互作用があるのかについてはわかっていません。この研究では越冬後の休眠幼虫の活動開始時期を実験的に調査することにより、2種幼虫の餌資源・採餌場所をめぐる競争について考察します。

 


「動物園で外来種問題に関する展示をすることによる教育的効果について」B4

井の頭自然文化園水生物園水生物館の特設展示「みんなの井の頭池 どんな池になってほしいですか?」という、井の頭池のかいぼり・外来種・在来種に関する展示を見た来園者へ、行動観察調査と会話聞き取り調査を行いそこから得られたデータの分析から外来種に関する教育について動物園が果たしている効果を考えています。8月に行った調査では、来園者の集団の属性、年代、性別、滞在時間、会話内容、行動内容(パネル展示を見た、写真を撮ったなど)の項目を、前期調査と後期調査で展示内容を変更して記録しました。

 

「生物多様性普及活動の試みとその質的分析」B4

生物多様性普及活動とは、人が身近な自然の中での体験を通して、生物多様性に対してリアルな価値を見出す場を創出することを目的とした活動です。本活動は、生物多様性の危機の本質を、人と生物多様性の関係が希薄になることで、人が生物多様性に対して自らの経験や生活に結びついたリアルな価値を見出せなくなることに求めます。本研究は、生物多様性普及活動を試行し、エピソードの記録や聞き取り調査によって得た情報の質的分析を行い、活動を通して参加者とスタッフの自然や生き物に関わる価値観がどのように変容したのかを明らかにすることを目的としています。

 


「都市域におけるアズマヒキガエルの非繁殖期の環境利用」B4

近年、都市環境において生息数の減少が指摘されているアズマヒキガエルを対象として研究を行っています。本研究では、目黒区内の公園、緑地を調査地として、繁殖期に産卵に集まるカエル1個体ごとにマイクロチップを挿入し、その後の行動を追う追跡調査などを行うことによりアズマヒキガエルの行動圏を明らかにするとともに、都市環境の中においてアズマヒキガエルの生息に必要となる環境要因を明らかにすることにより、これからの緑地管理の指針を考察することを目標としています。

「木もれびの森のおける森の変化と人の意識の変化」B4

本研究で調査対象地としたのは相模原市に位置する木もれびの森と呼ばれる緑地です。木もれびの森とは1973年に相模原近郊緑地特別保全地区に指定された場所を指します。木もれびの森を含む相模野台地は、かつていわゆる雑木林としての管理がされていましたが、戦後に開墾され、さらにエネルギー源の転換によりその役割は無くなりました。制度により行為が制限され、管理する人もいない林は次第に荒れていきました。現在ではボランティア団体が草刈りや散策路の整備など様々な活動を行っています。本研究では木もれびの森と森に関わって生活している人の関係性及び人の森に対する印象の変化を調べることによって求められる森の様子を明らかにすることを目的としています。